再度退職するために会社に報告。

「次こそ本当に本当なんだね、一度帰って来てるだけに本当に寂しい」

「はい、無理まで聞いていただき、お世話になりました」

「納得がいく旅が終わったら、また戻っておいで」

そう施設長が言ってくれ、涙が溢れそうになってくる。

それをグッとこらえて、会社のスタッフ一同に礼を言うと、また暖かい拍手と言葉。

 

こうして1ヶ月後に決まった退職、釜戸さんだけには一ヶ月後に退職することを伝えました。

最後の一ヶ月、釜戸さんにはお世話になりましたね。

それまで以上にツーリングでのトラブルの回避法、もしものときの備えや「北海道にいくなら熊の対策も教えてやらんとな(笑)」

「そんなの出るんですか?」

「北海道はヒグマだぞ、本州でみるツキノワグマと違って体もでかいしもっと危ないぞ」

釜戸さんは一度見たことがあるらしいヒグマ。

ソロツーリングで気をつけることは、バイクの盗難と北海道でのヒグマだそう。

人の経験とは楽しいものです、色々な話を聞け、その経験から僕は旅に出ることが出来るのですから。

そして退職の日、最後の送迎は釜戸さんを送ることでした。

「いつもより遠回りしてほしい」

釜戸さんはそう言いました。

いつもより長い送迎道。

キャンプの話はしませんでした、それよりも釜戸さんと会ったときの思い出話。

「最初お前を見たときは、頼りないと思ったけどな、最後まで頼りなかったな」

そういいながら笑いとばす。

「僕も初めて会ったときは頑固な人だと思いましたよ」と負けじと笑う。

釜戸さんと2人でブラックジョーク。

そうして家について別れの時。

「今までありがとうございました」

「こちらこそ、デイサービスに通うのが楽しみだったよ」

そういって握手をして別れました。

 

本来、利用者1人に肩入れするのはNG。

それでもいつの間にか特別な存在になり、釜戸さんに出会え、それだけで会社に入ってよかったと思えました。

そんな出会いでした。